SCENE
SHIZUOKA

〈シズオカ[KAGU]メッセ〉暮らしを豊かにする静岡発のものづくり

毎年6月にツインメッセ静岡で開催されている〈シズオカ[KAGU]メッセ〉。約70年の歴史をもつ静岡発の家具見本市です。静岡は徳川時代から続く木工家具の一大産地なのです。

平成元年までは「静岡鏡台家具総合大見本市」という名称だったそう

今年は〈mag design labo.〉の花澤啓太さん達の尽力で、従来とは趣向の違う、2つの新企画が登場します。

1つ目は〈Design & Craft 2018〉。衣食住にまつわる個性的な製品を提案する静岡のメーカー・ブランド31社が出展する意欲的なコンセプトゾーンです。家具に限らず、“暮らしを豊かにする”をテーマに多種多様な製品が魅力的に並びます。

2つ目は〈Designer’s Satellite 2018〉。13組のデザイナーによる新しい提案が、来場者の感性を刺激するデザイナーズゾーンです。新たな商品開発やビジネスへの発展を目指します。

今回は3名の出展者の方々にお話をうかがい、〈シズオカ[KAGU]メッセ〉新企画の雰囲気を事前にお伝えできたらと思います。

〈KOZOU HAKOSTYLE〉 木工/指物職人 | 戸田勝久

お1人目は〈Design & Craft 2018〉に出展する、〈KOZOU HAKOSTYLE〉木工/指物職人の戸田勝久さん。

戸田さんは京都で培った〈京指物〉と静岡で経験をつんだ〈家具指物〉の技術をベースに、地元静岡で技術者として木工の世界で活躍されています。

普段の仕事は家具メーカーやデザイナーなどから依頼を受け、技術的な課題を解決して実際に形作っていく仕事がメインですが、自身のブランドとして木工調度品の提案も積極的におこなっています。

精巧な作りで高級感がありつつ、サイズ感やフォルムのバランスがとても可愛らしい印象

戸田さんのつくりだすキャビネットや茶筒、箸などは指物の高い技術を活かした繊細な仕事が特徴的です。

どれも「和」の趣を大切にしながらも、それ以外のところからインスピレーションを得て自身のフォルムに落とし込んでいくそうです。その結果どれも和に染まりすぎず、今の感覚で楽しめるユニークさがあります。

静岡伝統工芸展 静岡県知事賞を受賞している〈二十角留継 茶筒〉

底の仕上げなど、随所に手間と技術を注ぎ込んで組み立てられている

〈継手箸〉は箸先と持ち代で木材の種類を変えたユニークなデザイン

随所にこだわりが散りばめられており、しかし一見してわからないことが粋な伝統工芸品。

当日はそんなこだわりのポイントや製品の特徴などを直接戸田さんに聞くことができるそうです。製作途中の〈仕掛品〉なども展示し、指物の技術がどのようにいかされ、さらにどの様な工夫でクオリティが高められているのか?

昔の職人さんはあえて語ろうとしない人が多かったのですが、これからの職人はどんどん良さをアピールしていくことも大切だという戸田さん。

KAGUメッセ当日は、商談以外にも気になることはどんどん質問してみてください。きっと驚くほどのこだわりを聞くことができますよ。

〈MIRUI〉 デザインユニット|collage + 荻野農園

こちらも〈Design & Craft 2018〉に出展する異色のトリオ〈MIRUI〉。

3人共に富士市で活躍している、グラフィックデザイナーのユウイチロウさん(右)、インテリアデザイナーの小笠原清美さん(中)、荻野農園代表の荻野和也さん(左)です。

今回の出展内容は、オリジナルの合組で仕上げた無農薬の茶葉とそのパッケージ、さらに荻野農園をテーマにしたTシャツです。

無農薬4年目だからこそ茶畑で見ることができる蜘蛛の巣や雑草をテーマにしたパッケージ

ユウイチロウさんと小笠原さんが交互にコラージュした荻野農園をテーマにしたTシャツ

〈MIRUI〉は静岡の方言で、柔らかいとか未熟という意味合いですが、お茶の新芽によく使われる表現のようです。

しかし〈MIRUI〉はブランド名ではなく、プロジェクト名。緑茶を出発点とはしていますが、デザインプロジェクトとして今後様々な発展を検討しているそうです。

今回の新の出展テーマは「逆依頼」とでもいいますでしょうか。

普段は受注する側であるデザイナー達が、荻野農園へ逆依頼。自分たちの求める茶葉を相談し、荻野さんに対してデザイナーが考える素直な表現を逆提案したそうです。

普段のワークフローとはまったく逆の道筋を辿った時に、どのようなアウトプットとなり、今の愛されたがる同じ様なデザインばかりが蔓延するデザイン界で、今回の展示がどのように受け止められるのか?

完全に実験的かつ、大人の皮を被った子供達の真剣な遊び。という表現が正しいのか。。

富士山麓で栽培する無農薬の茶園〈荻野農園〉。やさしく独特の風味が美味でした

農薬を使用しないために、蜘蛛の巣や雑草も茶葉に垣間みることができます

〈MIRUI〉には依頼主の要望をそのまま実現するだけではなく、第三者として適切だと考える高いクオリティで商品やサービスの提案をしたいという強い意思が感じられました。

また、東京にいるデザイナーにはできない、地元に密着した、土地を愛し、土地の人々との密な関係性をいかしたデザインを意識していると言います。

もともと販売されていたシンプルな〈MIRUI〉のデザイン

クライアントの言うことを聞くだけのイエスマンのデザイナーでは満足できない方、自然豊かな富士山麓で果敢にチャレンジしている無農薬の茶葉に興味がある方、ぜひ会期中に足を運び、〈MIRUI〉の3人とお話をしてみてはいかがでしょうか?

きっとものづくりに対する熱い思いやひたむきな姿勢を共有することができると思います。

〈町秋人建築設計事務所〉 一級建築士 | 町 秋人

最後は〈Designer’s Satellite 2018〉へ出展される、一級建築士の町秋人さんです。

建築という空間を通して、自然との関わりや家族・共同体との関係性を、どのように幸せなものとして機能させることができるのかを、常に問い続ける建築家です。

インタビューをさせて頂き、できるだけ自然やその土地を活かした空間を実現したいという気持ちがひしひしと伝わってきました。

我々人間も自然の一部だと考えた時にどれだけイミテーションや誤魔化しのない、心豊かな体験ができる空間かを優先的に考えています。

今回の出展では長い年月で培われた建築業界にある「規格」を美として捉えた、デスクとチェアを提案します。

一般にはあまり流通しない、建築業界の効率化の果に規格化(サイズや材質などの統一)されたコスパの高い木材たち

ボルトや鉄の部材ももちろん規格化されています

実家が建築木材の加工所ということが原体験にあり、幼い時から住宅の骨組みに最も美しさを感じていたという町さん。

そういった梁や柱の美意識を家具へと反映したのが今回の作品です。取材日にはまだ製作途中だったため模型や試作品を紹介していただきました。

多くのスタディーを経て決定したデスクとチェアの模型

自身で制作した試作品のチェア

深い思考と確かな経験を持つ町さん。こだわりの空間やインテリアを実現したい方がいれば一度話を聞いてみてほしいです。

若い謙虚さと緊張感を持った妥協のないな提案は、きっと気持ちのいいコミュニケーションとなって、依頼主と選ばれた土地を最大限にいかした、居心地のいい建築を提案してくれるはずです。

自身の価値観と自然の心地よさを追求することに重点を置く

建築の構造を家具へと反映した

〈シズオカ[KAGU]メッセ〉の新たなスタート

長い歴史を持つ〈シズオカ[KAGU]メッセ〉。2018年の今回は静岡のデザインがこれからの取り組みを強く進めていく、その新たなスタートとなる予感です。

会期は5月30日(水)〜6月1日(金)[一般公開:6月2日・3日]です。

通常の家具メッセにプラスして、〈Design & Craft 2018〉と〈Designer’s Satellite 2018〉の両企画に大注目です。

来場の際には是非多くのブースで意見交換をし、1つでも多くの発見を持ち帰って頂けたらと思います。

information
シズオカ[KAGU]メッセ 2018
会期 2018年5月30日(水) – 6月1日(金)[一般公開:6月2日・3日]
時間 9:00 – 17:00(6/1は16:00)
場所 ツインメッセ静岡 北館
料金 入場無料
WEB http://www.s-kagu.or.jp/messe2018
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