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SHIZUOKA

|前編|花澤啓太のデザインと思考〈knot〉

静岡にはフリーランスのカメラマンやグラフィック、ウェブのデザイナーは多くいるが、不思議なことにプロダクトデザインの分野でフリーランスとして活躍しているデザイナーはほとんどいない。

もしかしたら、生活に必要なものが満たされた日本において、量産と長期的に需要が見込めなければならないビジネス構造ゆえに、地方での職業需要が減っているカテゴリーなのかもしれない。

そんな中、静岡でプロダクトデザイナーとして表舞台に立ち、クオリティの高い作品を発信し続けていのが〈mag design labo.〉代表の花澤啓太さんだ。

〈TEARABLE LAMP〉モールド成型による、紙のみでつくられたランプ

私がインテリア・デザインの国際見本市〈Interior Lifestyle Tokyo〉のブランディングデザインに携わっていた時期に出展者として知り、静岡から東京、世界に向けて新し価値を提案しているデザイナーとして常にアンテナに引っかかる唯一の存在だった。

今回は静岡で活躍し、尊敬するデザイナーとして、念願かなってのインタビューである。

〈tote〉トートバックの三角マチをヒントにデザインされたサンダル。サンダルは静岡の地場産業だ

静岡での独立とターニングポイント

花澤さんのものづくりの道は、大阪芸大時代の油絵から始まり、浜松市のカントリー家具メーカーでのデザイン企画、藤枝市の家具メーカーでの家具工や、高級家具産地で知られる北海道は旭川でのクラフトマンとしての修行、そして静岡での独立、現在へとつながっている。

〈mori no sumi no mori〉静岡の間伐材を利用したセラミック炭の木のオブジェ。室内の空気を浄化してくれる

独立のきっかけはクリエイティブセンターとして立ち上げの時期だった〈CCC〉への入居だったという。当時の運営団体である〈ヘキサプロジェクト〉の方針は、静岡から東京を介さずに世界へクリエイティブを発信するというもの。

「独立したはいいものの、当初は自分が何たるかを知ってもらうためのオリジナルな作品づくりに2年ほど時間をさきました。静岡の家具メッセなんかにも出していたんですが、当時の僕が考えるデザインをあそこに展示してもみんなクエスチョンなわけで、、滅茶苦茶なことになってましたね(笑)」

その間はメーカーのカタログのデザインからECサイトの運営作業など、たとえ使いっ走りな案件などでもなんでもこなしてきた。

そんななか、今も懇意にしてくれる木工メーカー社長との出会いから、転機となる作品〈おしばなし文庫〉のデザインがうまれた。

フタを開けると子供の乳歯を衛生的に保管できるようになっている

〈おしばなし文庫〉は子供の乳歯やへその緒、手や足型などのかけがえのない記録を、統一感ある気持ちのよい形で大切に保存できる桐箱だ。

「入居していた〈CCC〉の方針もあり、世界に通じるデザインを求め、ある種とがった佇まいの作品を多く制作していました。この作品をきっかけに、デザインやアートに興味があってもなくても、多くの人に関心を持ってもらえる感度の置き場所を発見できたことが新鮮でした。」

この頃から、ストーリーや時間軸、ライフスタイルなど「言葉」に引っ張られる制作スタイルになっていった。

しかし、自らを根っからの天邪鬼だというとおり、はたしてそれだけで本当に良いのだろうか?という大きな疑問が徐々に浮かんできたという。今は一周回って「形」の表現に重点をおいたデザインを意識している。

そんな自身のデザイン感の変遷や、独自のデザインを体現すべくスタートしたのがオリジナルプロダクトブランド〈knot〉だ。

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mag design labo.
住所 〒421-0122 静岡県静岡市駿河区用宗1-27-5
TEL 054-270-7226
WEB http://mag-labo.net
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